野球が好きだった。

近くの小さな公園で
ゴムボールでしていた。

畑がファールエリア。
他人の庭がホームランゾーン。


意事項!!!

ライトの家に入ったボールは諦める!


なぜなら

ボールの守護神。

おっかな~~~い
頑固爺さんがいるからだ。 

校庭で

クラスメートがしていたけど
その輪に入れなかった。

「僕もやりたい!」って

なんか
恥ずかしくて言えなかったのだ。

だから
一塁の審判をやっていた。
勝手に・・・

いつか
「一緒にやろう」って
誰が言ってくれるのを信じて。



でも
誰も言ってくれなかった。


(もういいや・・・)

僕は
休み時間になっても教室にいた。

クラスメイトが
野球をしている校庭を
ぼんやり眺めていた・・・

休み時間が終わり
みんなが教室に戻ってきた。

すると
クラスメイトの一人が
こう言ってきた!

どうやら
一塁の判定で
微妙なものがあったらしいのだ。


自分の存在価値があったのだ!
なんて思えなかった。

(だから、何???)

(僕は審判がしたんじゃない!
 野球がしたんだよ!!!!!)


・・・・・数日後


待ちに待った瞬間。

うん!!

そう言うと
僕は校庭へ向かって駆け出した!

せは長く続かない・・・

だって
男子の関心は
サッカーに移ってしまったから。


だから僕は初めて
母に習い事をしたいと言った。

「少年野球をやりたい!」


でも
全然楽しくなかった。

待っていたのは
単調で厳しい練習。

(なんでバカみたいに
 ずっと声を出し続けるんだろう・・・)

初日から嫌になった。

学校の成績は
良かったはずなのに

少年野球がある日は
不思議なことに頭が悪くなった。 

イトってどっち?

タッチアップの練習。

実際に打球は飛ばさない。

監督が指示する方向に
フライが上がったと想定する。

「ライト!」

その方向を向く。

「キャッチ!」

ホームに向かってダッシュ!!!


さあ僕の番だ!

監督が「レフト!」と叫ぶ。

でも
ライトとレフトの
違いが分からない。


遊び時は分かっていたのに・・・

緊張して頭が真っ白になる。

どっちを見ていいか激しく迷う。

何度も「そっちじゃない!」
と怒られる。

そうすると
余計に緊張してダメになる・・・


ボロ負け試合。

監督が
補欠メンバーにこう言う。

でも
僕は名乗り出なかった。

だって
サインを覚えられなかったから。


少年野球に入ったことで

僕は
思い描いてものと現実は違うのだ
ということを少し学んだ気がする。

第八二段

作:帰ってきた兼好法師 
Twitter:@Kenkohoshi_R

併せて読んでもらえると嬉しいです!

休み時間はのんびりさせてよ

僕にとって休み時間の校庭は刑務所の中の運動場となった。だってカースト上位の男子に強制連行されるのだ。そうサッカーをやらせるために・・・