玄関に入った瞬間、分かる!
何か空気が違うのだ・・・
もちろん今日来ること
知っているからだと思うけど。
目を下に落とす。
見れない履物が置いてある。

おじいちゃん
おばあちゃんがやってきた~~~
なぜだろう・・・
心躍る瞬間なのだ。
普段とは違う毎日が始まる。
母は「勉強しろ!」と言わないし
ご飯も豪勢になる。
寿司と言えば・・・
いつもは小僧寿し。
でも今日は桶に入っている。

もちろん僕ら兄弟の分はない。
玉子などを恵んでもらう・・・
それだって十分おいしい。
おじいちゃんの手品
ビールを
飲んでいる浴衣姿の祖父。
よく手品をしてくれた。
耳の入れた十円玉を違う場所から出す。
何度も見ても分からない。
兄弟喧嘩が始まると
祖母が

と言う。
その方言を聞くと
なぜか優しい気持ちになれた。
そして
祖父母が帰ってしまった日。
学校から帰ると
家に漂う空虚感・・・
不思議な感覚だった。
成長すれにつれ・・・
祖父母に日常を奪われることに
苛立ちを感じるようになってしまう。
つい母に言ってしまった・・・

しかも祖父の目の前で・・・
「そんなこと言うんじゃありません!」
母は焦って僕に言う。
その時の
祖父の唖然した
寂しそうな表情を僕は忘れられない。

言ってはいけないこと言ってしまった・・・
後悔先に立たずである。
父母を育ててくれた
大事な人に向かって・・・
僕の息子が
父母に向かってそんなこと言ったら
どんな気持ちになるだろう・・・
でも
今のところその心配はない。
だって僕はまだ結婚していない。(笑)
そして
父母は弟夫婦の家に
泊まりに行ったことがない。
今はそんな時代なのかもね。
許せない・・・

僕の目の前に
姪っ子たちがいる・・・
キミたちのために
買ってきた2000円のお寿司。
もちろん
軍資金は母からもらったけど・・・
幼稚園生にそんな高いものをなぜ?
(なに~~~
ウニが嫌いだと~~~~)
(何贅沢言ってんだ!)
(おじちゃんはなあ~~)
(中学生まで『小僧寿し』だったんぞ!)
やはり孫には甘くなるものなのか・・・
でも甥・姪はかわいいんだよね。
だから許してやろう・・・
第九五段
作:帰ってきた兼好法師
Twitter:@Kenkohoshi_R
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