車窓を見ながら
涙がこぼれそうになった・・・

家を出る!

なぜか、決めてしまった。

これも運命だったのか!

い気持ちだった…

ふと
パソコンで物件を探した。

一人暮らしをするための。

でも
そんな強い決意だったわけではない。

いいのがあれば
・・・してみようかな?

そんな軽い気持ちだった。
 
マンション5F
おしゃれな外観

なんか
目に留まってしまった。


そういう時って
その間取り図を見ているだけで

勝手に
その場に住んでいる自分を
想像しちゃうんだ。

ワクワクしてしまう。

すぐ電話した。

でも・・・
すでに申し込まれていた。

今になって考えてみると
いわゆる「おとり物件」だったのか?


こちらにお越しいただければ
同じような物件を紹介できますが・・・


それを信じてしまった。 

初めての部屋

3件内見することになった。

女性が運転する車に乗って

僕は出発した!


1件目
家賃は安いけど・・・

フローリングには
蠅の潰れた死体が・・・

庭もあるけど草がボーボー。

収納は
クローゼットではなく
押し入れ・・・

あり得ない。


2件目は
それよりましなくらい。


そして3件目。

なんてキレイなんだ!
築浅物件だった。

ドアのノブが
金色に光っている!!!!

お風呂も白が際立っている。

トイレもウォシュレット。

モニター付きインターホン。
これは実家にもない!

物が何一つない
広々とした部屋!!!

これを
自分色に染めることができる!

僕はもう
そこに住んでいる気になっていた。


僕は見事に
不動産屋の作戦に引っかかった。


お店に戻ると
何が何でも契約を結ばせようとする
営業マンが待っていた!

営業マンとの防!

1K家賃7万6千円。

敷金礼金それぞれ2か月。

払えない額ではない・・・

でも
価格交渉できるとネットにあった。

住む気満々だったが・・・

契約させる気満々の
営業マンをかなりじらした。


今その物件に内見が
入っているみたいですよ!


と僕を焦らせようとする。


フフ甘いな・・・
それがウソであることはお見通しだ!

BYネット情報(笑)

こういった
交渉が初めてであるかも関わらず
僕は冷静だった。

だって
別に一人暮らししてなくてもいいだもん。

だから、こうかわす!

それだったら
ご縁がなかったということですね。


すると
しばらくして
営業マンはこう言った。

では
礼金1か月でどうでしょう?


よし!これで7万6千円得した。


もう一押しできるかな?

家賃を
下げてくれれば即決します!


家電の交渉術を使ってみた。

営業マンは
デスクに戻り電話をし始めた。

価格交渉をしている・・・

ダメでした・・・
やはり家賃は無理みたいです。



これが限界だと思った。

・・・契約してしまった。

家を出るとに告げた…

でも
帰りの電車で気づいたんだ。

これって
家を出るってことじゃないか!


あの営業マンとの
値下げ交渉に夢中になるあまり
僕は大事なことを忘れていたのだ。


電車に乗り
ボケっと車窓を眺めながら
これから来る現実を想像してしまった。

家族と離れるんだ・・・

父の顔、母の顔
弟たちの顔

もう毎日見られないんだ・・・

そんなことを
急に思ってしまって

不覚にも目に熱いものを
感じてしまったのだ。



僕が決断する時
家族には一切相談しない。
全てが事後報告。

俺、ここを出ていくから

と母に唐突に告げた。

お父さん、お父さん
○○が出てくってよ。


母が慌てたように父に告げる。

父は一瞬にして
ムスッとした表情になり
何も言わなかった。

喜んでくれないのかよ!

なんだよ!
あんたが望んでいたことじゃないの?


父の気持ちが分からなかった。

と父の説教


僕が成長するにつれ

父は酒の力を借りないと
僕に説教できなくなっていた。

出ていけ!
とも言われなくなっていた。

酔うたびに
同じ話を延々とする。

裕福ではなかった家を出て
東京で一人暮らしを始めた父。

初めて自分の金で
回らない寿司を食べた時の
感動を何度も何度も。


僕に
自立を促していると思っていた。

でも
居心地の良い家を
離れる気には全くなれなかった。


だから
自分がなぜ決断したのか?

そして
なぜ僕の決断を
父は喜んでくれないのか?

分からなかった・・・

 
父が喜んでくれれば
家族と別れなくてはならない
僕の悲しみも少しは和らぐかも

そう期待したのに・・・

のために家を出る!

三男には
自分の部屋がなかった・・・

襖で仕切られた
隣の部屋には次男がいた。


長男である僕は
よく彼女と長電話していた。

弟の勉強の邪魔をよくした。

だから
別れたいという
彼女をなだめるため

電話の子機を片手に
庭の物置で電話したこともあった。

アルバイトだけど
一人で生計を立てられる収入がある。

数百万の貯金もある。


僕はもう
ここにいるべきではないんだ。
そう思うこともあった

でも、それは時々。


こんな
住みやすい街はないと思っていた。

なのに
なぜ家を出る決心したのか・・・
今でも分からない。

ふるさとを
離れる悲しみをまぎわらすため

弟のために家を出る
そう思うしかなかった。

第五三段

作:帰ってきた兼好法師 
Twitter:@Kenkohoshi_R

※兄弟に関する思い出の記事です

初めての「お引越し」

人生初の引っ越し。そして一人暮らしが始まる。味噌汁の味、トイレットペーパーの感触、実家とは違う生活。隣人への挨拶は・・・戸惑うことばりかりでした。