その女性はホームに立ち尽くしていた
ベビーカーに
泣き続けるわが子を乗せて。

電車内での
冷たい視線に耐えきれず
降りるはずではなかった駅で
追い出されるように
下車したのでしょうか・・・
僕は想像するのです。
わが子を育てる苛酷さを
授乳、おむつ交換、夜泣き
もう寝たいのに眠れない。
ようやく眠れたと思ったら起こされる。

わが子なのにかわいくない・・・
そう感じる瞬間があって当然ですよね。
しかし
そんな自分を責めてしまうのです。
なんてダメな母親なんだろう・・・
こんなこと思ってしまってゴメンね。
やっと手がかからなくなったら
やってくる反抗期。
なんて母親って
大変な仕事なのでしょう。
なんで
自分を苦しめることもあるのに
わが子に最大限の愛情を
注げるのだろうか?
これが本当の親バカなのかな?
だから
こんなシーンを見ると
僕の心は柔らかくなるのです。

僕は子育てをしている人たちに
敬意を表します。
育児の全てを妻に任せる夫
もし僕が結婚して
子どもが生まれれたら
そうなっていたかもしれません。
かつて僕は妻になる人に
専業主婦になってもらいたいと
思っていました。
子どもが学校から
帰ってきた時、誰が待っている。
そんな家庭が理想だなあ。
そう考えていたのです。
僕の母が専業主婦だったことも
影響しているかもしれません。
でも
実際に就職してみると
自分の年収では共働きではないと
やっていけない・・・
そんな現実が待っていました。
共働きでも僕は育児を
手伝えていたのでしょうか?
夫が育児を『手伝う』
その姿勢がダメでしょう
最近、気づいたのです。
育児は手伝うものではなく
一緒にするものであることを。
だから僕は
結婚できなかったのでしょう(笑)。
子育ての大変さを
全く分かっていなかったのです。
僕の職場には
子育てをしながら
働いている女性が多数います。
ある日の朝のこと。
会社の
玄関付近で「おはようございます」
そう声をかけてきた
女性がいました。
僕の隣に
座っている方でした。
その恰好に驚いたのです。

(この人はお母さんなんだ・・・)
頭では分かっていたつもりでした。
でも
この人は毎日こんな小さな子を
抱っこして出勤して
会社近くの
保育園に預けているのか!!!
その現実を目の当たりにして

衝動を受けたのです。
「子どもが爆睡しちゃって。
保育園に連れていけないんですよ」
そう明るく話す彼女に対して
僕は軽く会釈することしか
できませんでした。
リアルな「働くお母さん」と
お気楽な自分との格差に
この上ない
恥ずかしさを感じたのです。
作:帰ってきた兼好法師
Twitter:@Kenkohoshi_R